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ののの  著:太田靖久

小説
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曖昧な世界の境界線、簡単にはわかりあえない他者との関係を描き、「自由とは何か?」という問いを投げかける太田靖久の小説は、読者に「目を凝らし想像すること」を求めているかのようです。

すぐには全体が見渡せない不穏な作品世界の中を、一歩一歩想像しながら歩いていると、いつしか道が開け自由な場所へと導かれる。

そんな、自由で不自由な小説集です。


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  1. かとむこ より:

     自由を社会的に求めると不自由にならざるをえない時、今目の前で起こっている事の全てを、その瞬間に把握し続ける行為が必要になる。
    太田靖久の小説『ののの』は謂わば何一つ失わずに生きてゆく為のハウツー本かのような横顔がある。
    だが、この物語は絶対に正面からしか向き合わせてはもらえない。
    それは、言葉、文章、会話、描写が
    1滴の染みもない純文学の恐ろしさと愉悦に満ちてるからなのか。
    繊細さは突き詰めるとある種の超能力じみた知覚を開く。
    皆がそうであれば良い、と或いは作者は望むのだろうか?
    高い木々が風で揺れている時、それを見上げている〈僕〉の場所は凪いでいる。
    疑問のような、謎謎のような、啓示みたいな、審判と似た、価値観と正誤の狭間で会った事も無い男女が、
    生きて、苦しんで、輝いている。
    その曲線は丁寧で美しくて、最後のページの1文まで、見惚れた。
     

    5.0 rating